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道徳授業「わたしのいもうと」(上)

著者 Aoki

2000年 月 日(水)産経新聞静岡版”学びと教えの現場から”掲載

道徳授業「わたしのいもうと」(上)

 小学三年生の道徳の授業。

「今から『わたしのいもうと』という本を読みます。本当にあった話を松谷みよ子さんが絵本にしたものです。」と授業を始める。
 これまで何度も,絵本の読み聞かせをしてきている。いつものように子供たちはどんな話なのかと期待しながら,黒板の前に集まってきた。
 子供たちから見えるように絵本を開き,静かに読んでいく。
『この子は/わたしの いもうと/むこうを むいたまま/ふりむいて くれないのです……』
 姉「わたし」による語りで話が進んでいく。
 小学四年生の「いもうと」は,引っ越してきてすぐにひどいいじめにあう。
『ことばが おかしいと わらわれ/とびばこが できないと いじめられ/クラスの はじさらしと ののしられ』
 いじめの内容が惨くなるにつれ,聞いている子供たちの顔が悲しげになっていく。
 「いもうと」は,学校に行けなくなり,食事も満足にとれなくなってしまう。

 そこまで読んで絵本をとじた。前に出ていた子供たちを席に着かせ,たずねた。「お話を聞いてどう思いましたか。」
「ことばがちがうというだけでいじめるなんてひどい」「くさいぶたなんてよばれてかわいそう」「くばった給食を受け取ってもらえないなんてひどすぎる」「いじめた子は悪い」
 どの子も「いもうと」の悲しさを,自分のことのように考えて発言した。
 感想が一通り出つくしたところで問うた。「まだ,このお話には続きがあります。どうなるといいなぁって思いますか。」
 子供たちは,いじめが無くなって欲しいという願いを込め,力強く発言した。
「友だちができてなかよく遊べるようになってほしい。」「友だちといろんな話をして学校に行けるようになるといい。」普段よりずっと真剣眼が光っている。

「話の続きを読みます。」の言葉に,みんなが,どっと前に出てくる。期待の大きさが伝わってきた。
 絵本を開き,続きを読む。
 月日が経っても「いもうと」は,家に引きこもったまま。いじめた子達は中学生になり,高校生になり,楽しそうに窓の外を通っていく。「いもうと」は,「わたし」にもふりむいてくれない。部屋の中で口を閉ざし,ただ折り鶴を折るだけ。
『ある日 いもうとは/ひっそりと しにました/つるを てのひらにすくって/花といっしょに いれました』
 この二文を読んだ瞬間,教室内の空気がさっと変わった。
 子供たちの顔に,なんともやりきれない表情が浮かぶ。絵本の最後ページに書かれた手紙が痛々しい。
「わたしを いじめたひとたちは/もう わたしを/わすれてしまったでしょうね/あそびたかったのに/べんきょうしたかったのに」

 「最後まで聞いてどう思いましたか」とたずねた。
「友だちと遊んだり,勉強したかったのに,死んでしまうなんてかわいそう」「ひとりぼっちで死んでしまってかわいそう」「いじめた子達がゆるせない」「お姉さんや,お母さんは,とても悲しかったと思う。」
 自分の願いとはあまりにもかけ離れた終わり方。ショックを受け,切ない気持ちを語る。

 ここまでで十分なのかもしれない,これ以上指導していくことは蛇足にしかならないのかも……そういう思いが頭の中をかけめぐった。
 が,「わたしのいもうと」は事実に基づいて書かれたものとはいえ,クラスの現実とはちがう。子供たちに,「いじめ」を自分の問題として考えて欲しい,そんな思いから,さらに問いを投げかけた。
(つづく)

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